ERPコンサルタントとは何? 必要なスキルや資格や年収、将来性を徹底解説

ERPコンサルタントとは何? 必要なスキルや資格や年収、将来性を徹底解説

「ERP(企業資源計画)」とは、企業経営における基本的な4つの資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を1か所に集約し、企業活動を最適化するために有効活用する考え方やシステムのことです。近年は中小企業でも、経営資産の効率的な活用に役立つERPを導入する例が増えています。より効果的な形で導入を進めるために、サポートを求めている企業も少なくありません。そんなERP導入に際し、企業の経営課題を踏まえたアドバイスを行うのが「ERPコンサルタント」です。この記事では、需要が高まりつつあるERPコンサルタントを目指したい方に向けて、仕事内容や平均年収、必要なスキルと資格、将来性など、さまざまな情報をまとめてお届けします。

ERPコンサルタントとは​何?

ERPコンサルタントとは、ERP(企業資源計画)を取り入れることで、クライアント企業が経営課題を解決できるようサポートする仕事です。企業が持つ経営資産をどのように活用すれば生産性や業務効率を向上できるのか、そのために必要なシステムはどのようなものかを分析し、システムの選定から導入、運用までを支えます。

近年ではさまざまな企業でERPの導入が進んでいるため、大企業のみならず中小企業でもERPコンサルタントを頼る例が増えています。

ERPに​ついて

ERPは「Enterprise Resources Planning」の略称で、企業経営の要となる「ヒト・モノ・カネ・情報」といった資源を適切に管理し、有効活用するための計画や考え方を指す言葉です。現在では、資源の管理に必要な「基幹情報系システム」を指してERPと呼称することが多いです。

ERPのメリットは情報を一元管理できる点にあり、財務・会計管理から在庫管理、生産管理、マーケティングや営業支援に関わるものまで幅広い情報を集約できます。

ERPコンサルタントの​仕事内容

前述のとおり、ERPコンサルタントはツール導入前の分析から運用のサポートまで統括的なフォローを行います。ここでは、各業務の内容についてより詳しく紹介します。

1.​課題や​導入目的の​明確化

ERPは、あくまで企業が目的を達成するための手段の一つに過ぎません。導入効果を得るには、事前に解決したい経営課題やERP導入の目的を明確化することが重要です。そのため、まずは企業の現状調査やクライアントへのヒアリングを通じて情報を整理し、ERPの適切な位置づけや期待できる効果をまとめます。

2.​ERP製品の​選定

課題や目的が明確になり、求められる要件が判明したら、それに合わせてERP製品の選定を進めます。カバーしたい業務範囲や企業の業態とマッチしているか、既存システムと連携できるか、カスタマイズ性や拡張性、クラウド型かオンプレミス型かといった環境面など、さまざまな要素を考慮して決定します。

3.​ERP導入支援

製品の選定後は、実際の導入とそのための準備に入ります。ERPコンサルタントは導入プロジェクトのマネージャーとして全体を統括するポジションであり、予算やスケジュール、進行の管理も行います。この間にクライアントとコミュニケーションを取ることで要望をくみ取ったり、トラブルに対応したりすることも、ERPコンサルタントの業務の一環です。

4.​ERP運用の​サポート・研修

運用開始後の支援についても、ERPコンサルタントが担当するケースが多いです。例えば、不具合やアップデートへの対応、新システムの追加、運用に関する研修などにも対応します。また、経営課題が期待どおり改善できているのかを確認し、問題があれば対策を練るなど、当初の目的を達成できるまで継続したサポートを行うことが求められます。

ERPコンサルタントの​種類

ERPコンサルタントの中でも、「SAP」というパッケージを専門的に扱う人のことを「SAPコンサルタント」として、一般的なERP導入コンサルタントと呼び分ける場合があります。厳密に分類されているわけではないものの、両者には次のような違いがあるのが特徴です。

1.​ERP導入コンサルタント

一般的に「ERP導入コンサルタント」というと、SAPに限らずあらゆるERP製品に対応する人を指します。企業の業務改革そのものを支援することに重きを置き、パッケージごとの特徴を把握して、幅広い選択肢の中から導入を提案できます。各企業に合ったシステムをゼロから作り出す「スクラッチ開発」にも対応可能です。

2.​SAPコンサルタント

SAPコンサルタントは、ドイツのSAP社が提供するERPパッケージ「SAP」についての深い知識やスキルを持ち、SAPの導入やカスタマイズ、運用をサポートします。ERP導入コンサルタントと比べて提案できる選択肢は限定的になりますが、SAPは世界的にシェア率の高いパッケージであり、国内での需要も高いのが特徴です。

ERPコンサルタントの​平均年収は​どれくらい?

厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」<愛称:job tag>において、ERPコンサルタントのようにIT関連のサポートを行う「ITコンサルタント」の平均年収は684.9万円と紹介されています。これは、一般的な平均年収と比較すると高水準といえる数値です。また、ITコンサルタントの年収はスキルレベルによって大きく変動するため、高度なスキルを持った人材であれば年収1,000万円を超えることもあります。

ERPコンサルタントもその例にもれず、専門知識の豊富さや経験年数、スキルによって年収アップが見込める職種といえます。複数のプロジェクトの統括・責任を背負うクラスになると、報酬も高額になる可能性が高いです。経験年数のほか、企業規模や参画するプロジェクトの難易度なども、報酬に影響すると考えられます。

各業界で組織再編や企業の統合などが行われている影響もあり、ERPコンサルタントは国内外でニーズが高い状況が続いているため、今後も安定した収入と成長のチャンスが得られると期待できます。

Sky株式会社の平均年収と役職別モデル年収
Sky株式会社は役職別のモデル年収を公開しています。ERPコンサルタントだけでなく、全職種の平均となりますが目安として参考にしてください。

ERPコンサルタントの​働き方

ERPコンサルタントとして転職や就職をするにあたり、どのような企業を選択すべきか迷うこともあるのではないでしょうか。主な働き方の選択肢として、ここでは3つの業態をご紹介します。

1.​コンサルティングファーム

「コンサルティングファーム」は、ERPコンサルタントの活躍の場として代表的な例の一つです。コンサルティング業を専門的に行っており、扱う案件の規模や種類が幅広く、最新のERP技術や経営戦略を学べる可能性があります。

大手のIT系コンサルティングファームでは、ERP導入に限らず、さまざまなシステムの開発・導入やIT戦略そのものの策定に対応しているケースが多いです。キャリアの幅を広げたい人や、周囲からの刺激を受けて成長につなげたいと考える人にとっては、魅力的な環境といえます。

2.​ERPベンダー

ERPベンダーとは、前述のSAP社のような、ERPの製品開発・販売を行う企業のことです。自社製品のカスタマイズや導入、運用をサポートする専門家として、ベンダー企業に所属して活躍するERPコンサルタントも多いです。

自社製品のみを扱うため、他社製品について知見を広げることは難しく、必要に応じて自身で学習する必要があります。代わりに、自社で扱っている製品はとても深い知識と経験を得られる環境です。

3.​SIer

SIer(システムインテグレーター)とは、ITシステムの設計や開発、運用・保守などを請け負う企業を指しており、Sky株式会社はこのSIerにあたります。ERPを含むITシステムの導入支援や、クライアント企業の課題解決に向けたコンサルティングなども行っている場合が多く、ERPコンサルタントが活躍できる職場です。

SIerには、ERP製品のパートナー企業であるケースや、自社でERP製品を開発しているケースなど、さまざまなパターンがあります。対応する業務の幅が広いのも特徴で、多くの貴重な経験や業界知識を得られる点が魅力です。

業務例としては、クライアントの業務プロセスの分析や導入する製品の選定のほか、既存製品のカスタマイズやほかのシステムとの連携、既存製品に不足している機能を追加で開発する「アドオン開発」などが挙げられます。

大規模なプロジェクトに参画できるチャンスがあり、総合的なスキルアップを目指したい人に向いている働き方です。

ERPコンサルタントへ​求められる​スキル

クライアント企業が抱える課題を的確に解決するため、ERPコンサルタントにはさまざまなスキルが求められます。ERPコンサルタントを目指す上で、身につけておくべき代表的なスキルには次のようなものが挙げられます。

1.​ERPパッケージに​対する​広い​知識

ERPのパッケージに関する幅広い知識をつけておくことで、クライアントごとの状況に合わせた提案ができるようになります。ERPはSAP社やOracle社、Microsoft社など複数の企業が提供しており、特にSAPとOracleは導入数の多い代表的な企業として知られています。

さらに、製品そのものの知識に加え、実際に導入・運用を行った経験から実践的な知識を身につけていくことで、より最適な提案が行える人材を目指せます。

2.​企業経営や​業務内容に​関する​知識

経営課題について正しく理解し解決に導くためには、各業務に関する知識や企業経営の知識も持ち合わせていなければなりません。会計や税務、マーケティング、人事、労務などの業務内容を把握しておくことで、どこにどのような経営資産があるのかを的確に整理できるほか、クライアントの要望もくみ取りやすくなります。

また、クライアント企業を取り巻く業界の知識も持っていると、コミュニケーションの円滑化や信頼関係の構築につながります。

3.​コミュニケーション能力

ERPコンサルタントに限らず、コンサルティング業では基本的に高いコミュニケーション能力が求められます。さまざまな人と接する機会がある上に、プロジェクトを成功させるには、クライアントのニーズや思いをくみ取ることが重要になるからです。

信頼関係を築く力や、クライアント自身が自覚していない課題まで見つけ出せるよう相手の気持ちに深く入り込むスキルのほか、提案内容をわかりやすく伝える能力なども重視されます。

4.​問題解決能力

ERP導入が無事に完了し、運用を軌道に乗せられたとしても、当初の問題が改善されていなければ、ERPコンサルタントとしての目標を達成できたとはいえません。論理的に物事を考え、効果的に問題を解決する能力は、コンサルティング業全般に求められる重要なスキルの一つです。

こうしたスキルは、大枠の戦略を練る際はもちろん、導入後の効果検証やさらなる改善策の考案にも役立ちます。また、解決能力の高さはクライアントからの評価にもつながります。

ERPコンサルタントに​なる​ための​転職ルート

ERPコンサルタントへの転職を検討する場合、ERPコンサルタントの業務に生かせる経験があると有利に働きますが、未経験からでも転職は可能です。ここでは、代表的な転職ルートの例を挙げてポイントを解説します。

ERPエンジニアから​転職する​場合

ERPシステムの設計や開発、運用・保守を行う「ERPエンジニア」は、ERPコンサルタントへの転職に有利な職種です。すでにERPシステムについての深い知識は身についているといえるため、コンサルタントとしてのスキルを上げれば活躍できる可能性が高いです。

また、プロジェクトマネージャーなどの全体を統括する立場を経験していると、コンサルタントとしての適正も高いと評価されることが多く、より転職しやすくなります。

コンサル職から​転職する​場合

反対に、異なる分野でのコンサルティング経験を足掛かりとして転職し、後からERPに関する知識を身につけることでERPコンサルタントとして活躍する人もいます。コンサルタントとしての実務経験や、求められるスキルを備えていることを証明できるため、ERPエンジニアと同様に転職しやすいルートです。

いずれの分野からの転職でも、ERPについて学びを深める必要はありますが、ITコンサルタントの経験者は知識や経験を生かしやすく、特に有利とされています。

未経験から​転職する​場合

ERPコンサルタントの求人は基本的に、ERPエンジニアやコンサルティング業の経験があることを必須とされる場合が多いですが、人材確保や育成のために未経験からの採用が行われるケースもあります。

ERPエンジニアやコンサルタントの経験がない場合でも、何らかの形でERPに携わっていればアピールポイントになります。それも難しい場合は、業務に生かせる資格を取得するなど、関連知識を身につける意欲を見せることが大切です。

ERP・CRMパッケージ導入コンサルタント / 開発エンジニア|Sky株式会社
Sky株式会社では、ERP・CRMのパッケージ導入コンサルタントおよび開発エンジニアを募集しています。業務内容や募集資格など詳しくは上記ページをご覧ください。

ERPコンサルタントに​なる​ために​必要な​資格

ERPコンサルタントは資格が必須になる職業ではないものの、さまざまな知識やスキルが求められるため、それらを身につけていることの証明として、資格を取得しておくことをお勧めします。ERPコンサルタントを目指す際に役立つ資格は、次のようなものが挙げられます。

1.​SAP認定コンサルタント資格

「SAP認定コンサルタント資格」は、 SAPに関する知識があることを認定するSAP社公式の資格です。100種類以上の資格が最大9言語で提供されており、日本語で受けられるものもあります。

専門的なため、SAPに携わったことがない人にとっては難易度の高い資格ですが、独学でも合格を目指すことは可能です。ネットで見られる動画や、書籍などで勉強できるほか、SAP社が提供しているトレーニングでも学べます。

2.​中​小企業診断士試験

中小企業診断士は、中小企業の経営課題について分析・アドバイスが行える能力を証明する国家資格です。通信講座などの種類が多く、勉強しやすい資格となっています。

勉強の過程で、経営に関するノウハウを蓄積することが可能なため、取得することで適切な提案を行うためのスキルを向上できます。特に、中小企業特有の課題に対して改善策を講じやすくなり、クライアントからの信頼獲得にもつながります。

3.​ORACLE MASTER

ORACLE MASTERは、ERPを提供していることでも知られるOracle社による認定資格で、「Oracle Database」というデータベースを管理する技術を証明するものです。

取得する過程で、ERPシステムを構成しているデータベースについて詳細に学習できるため、ERPコンサルタントとしてサポートできる業務の範囲を広げられます。データベース設計や、パフォーマンスの最適化に特に関係する資格です。

4.​簿記検定試験

簿記は、企業の経営について記録・計算・整理を行い、経営成績や財政状況を明らかにするための技能です。経営管理能力を身につけられるため、さまざまな業種・職種の人が簿記検定試験を受験しています。

経営や会計に関する基礎知識は、財務関連データを扱う機会が多いERPコンサルタントにとっても非常に役立つものです。メジャーな資格のため、書籍や講座なども充実しており、自分に合った方法で取得を目指せます。

ERPコンサルタントの​将来性

近年では大企業だけでなく、中小企業でもERPなどのITシステムを取り入れる動きが活発化しており、ERP導入のサポートを必要としている企業は多いと考えられます。

また、現在多くの企業で導入されている「SAP ERP 6.0」は、2027年にサポート期限を迎えます。そのため、後継製品への移行や別の製品への乗り換えを検討する企業が増えており、ERPコンサルタントの需要はますます高まっていくと予想されます。

まとめ

ERPコンサルタントは、ERPシステムへの深い知識とコンサルティング能力の両面が求められる職業です。スキルを生かした転職や、未経験からのキャリアアップなど、キャリア形成の形はさまざまです。

ERP製品の新規導入や乗り換えを検討する企業は増えており、それらを支援するコンサルティングの需要も増加していくと考えられます。今回ご紹介した内容が、これからERPコンサルタントを目指す方の参考になれば幸いです。

ERP・CRMパッケージ導入コンサルタント / 開発エンジニア|Sky株式会社
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